2025年8月19日

2025年の夏も猛暑の予報!

”睡眠後進国”の日本人におすすめしたい、寝苦しい夏の夜も快適に眠れる睡眠メソッド

2025年の夏も、昨年に引き続き記録的な猛暑が予想されています。昼間だけでなく、夜間も気温が下がらず寝苦しさを感じる人も多いのではないでしょうか。エアコンの冷えや寝汗による不快感、暑さによる入眠障害は、睡眠の質を大きく損ねます。

とくに日本は“睡眠後進国”と呼ばれるほど、慢性的な睡眠不足が深刻です。今回は、そんな日本人にこそ知ってほしい「夏の快眠メソッド」を、医師の知見も交えながら紹介します。

冷感ボディソープなどのアイテムを活用した具体的な方法も取り上げているので、今年の夏の睡眠環境を見直すきっかけにしてみてください。

”睡眠後進国”日本。慢性的な疲労感を感じている人は約8割

日本人は世界的に見ても、睡眠時間が短い傾向があります。

令和3年にOECD(経済協力開発機構)が発表した調査報告によると、日本は調査対象となった33カ国の中で、最も平均睡眠時間が短い国でした。

参考:厚生労働省 健康づくりのための睡眠ガイド 2023

さらに、一般社団法人日本リカバリー協会によると、令和5年に実施された全国10万人調査の結果、日本の20~79歳の約8割が「疲れている」と感じていることが明らかになりました。特に20~30代女性では「元気な人」がわずか1割にとどまり、深刻な疲労状況が続いています。

参考:一般社団法人日本リカバリー協会 日本の疲労状況2023

一般社団法人日本リカバリー協会 日本の疲労状況2023(疲労状況(全国、男女計、20~79歳、2021-23年比較)単位:%)

この背景には、長時間労働やストレス、スマートフォンなどによる生活リズムの乱れなど、さまざまな要因があります。中でも特に見逃せないのが、「睡眠の質の低下」です。単に睡眠時間を確保するだけでなく、深く、十分に回復できる睡眠をとることが、心身の健康維持には欠かせません。

とくに夏は、気温と湿度の上昇によって寝苦しくなり、睡眠の質が下がりやすくなります。そこで、夏に合った睡眠環境づくりや入眠前の習慣を整えることが、快適な眠りと健康維持につながります。

医師が考える、疲労回復につながる、夏の効果的な睡眠メソッド

「睡眠の質」を決めるうえで最も大切なのが、「眠りはじめの90分間」です。睡眠の最初の90分間は、深いノンレム睡眠が得られるゴールデンタイム。この時間にどれだけしっかりと脳と身体を休ませられるかが、翌日のパフォーマンスを大きく左右します。

夏場に睡眠の質を高めるためには、「体温のコントロール」が鍵となります。人は体温が下がると自然に眠くなるようにできていますが、気温が高い夏は体温がうまく下がらず、眠気を妨げてしまいます。

実際、夏の寝室の室温が上昇すると、睡眠時間が短くなり、睡眠効率が下がることが実生活下の調査で明らかになっています。こうしたことからも、夏の夜を快適に過ごすためには、エアコンなどを活用して寝室を涼しく保つことが大切だといえるでしょう。

ただし、注意したいのは「体を冷やしすぎないこと」。エアコンの温度設定が低すぎると、体が冷えて目が覚めてしまう原因になります。さらに、冷たい飲み物を寝る前に摂ると、内臓が冷えて交感神経が活性化し、かえって眠りを妨げることもあるため注意が必要です。

医師直伝、夏の寝苦しい夜におすすめの具体的な快眠法

それでは、具体的にどのような方法が「夏の快眠」に役立つのでしょうか。医師のアドバイスをもとに、すぐに実践できるポイントを紹介します。

○就寝1〜2時間前に40℃のお湯で10分入浴

寝苦しい夜におすすめなのは、就寝の1〜2時間前に、40℃前後のお湯で10〜15分ほど入浴することです。入浴によって深部体温が上昇し、入浴からおよそ1時間後には約1℃ほど高くなるとされています。

この一時的な深部体温の上昇は、寝つきを良くし、深いノンレム睡眠を促すことがわかっています。 また、40℃のお湯に腹部まで浸かる「半身浴」を30分ほど行う方法でも、同様の睡眠改善効果が期待できます。入浴後に軽く汗をかくこともポイントです。汗が蒸発する際の気化熱によって深部体温がスムーズに下がり、自然な眠気が訪れやすくなるのです。

さらに冷感ボディソープを使うと、皮膚表面の温度を一時的に下げることができ、入浴後の爽快感がぐっとアップします。

○入浴後はクールダウン&照明を控えめに

入浴後はエアコンや扇風機を使って部屋を心地よい温度に保ちましょう。入浴後の放熱は主に手のひらや足の裏から行われます。そのため、靴下で足を過度に温めてしまうと、放熱がうまくできず、かえって深部体温が下がりにくくなります。結果として、寝つきが悪くなったり、睡眠の質が低下する原因になることもありますので、要注意です。就寝時は素足で過ごすか、通気性のよい寝衣や靴下を選ぶのがおすすめです。

さらに、照明は白色よりも電球色などの柔らかい色に変えるとよいでしょう。視覚的な刺激を抑えることで、副交感神経が優位になりやすくなります。

また、スマートフォンやパソコンなどの明かりも、睡眠の妨げとなるため、寝る前の1時間は画面から離れることを意識しましょう。
LED照明やデジタル機器の光には、体内時計に影響を与える短波長のブルーライトが多く含まれています。さらに、寝ている間であっても、わずかな照明によって中途覚醒の時間が増え、睡眠の効率が下がるとする研究もあります。
寝室にはスマートフォンやタブレット端末を持ち込まず、できるだけ暗く静かな環境を整えることが、質の高い睡眠につながります。

○エッセンシャルオイルの香りで副交感神経を優位に

睡眠の質を上げるためには、体温調節だけでなく「リラックスすること」も欠かせません。交感神経が優位になっていると寝つきにくくなるため、副交感神経を活性化させて、心と体をリラックス状態に導くことが重要です。

とくにラベンダーやゼラニウム、ペパーミントなどの香りには、副交感神経を優位にして気分を落ち着ける働きがあるとされています。

冷感ボディソープの中には、こうした天然エッセンシャルオイルがブレンドされたものもあり、香りの効果でより深いリラックスを得ることができます。入浴による体温調整と香りによる心理的作用が組み合わさることで、夏の夜でも心地よく眠りに入る準備が整います。

実際、ある研究では「ペパーミント精油配合のボディソープを使った場合、肌の表面温度が有意に低下した」という結果も報告されています。

疲れやすい夏も快適に過ごそう

夏は気温と湿度のダブルパンチで、ただでさえ疲れやすい季節です。日中の暑さで体力を消耗し、夜もよく眠れない!という悪循環に陥らないためには、「睡眠の質」を高める工夫が欠かせません。

今回ご紹介したように、体温コントロールやリラックス習慣、冷感アイテムの活用など、小さな工夫の積み重ねが、質の良い睡眠を支えてくれます。まずはできるところから、夏仕様の快眠習慣を取り入れてみてはいかがでしょうか?

「暑くて寝苦しいから仕方ない」とあきらめる前に、ほんの少し生活を見直すだけで、睡眠の質はぐっと上がります。2025年の猛暑も、しっかり眠って健やかに乗り切りましょう。

監修

松島 勇介 先生


千里中央メディカルクリニック院長
日本睡眠学会専門医/日本医師会認定内科医/日本消化器学会専門医/日本内視鏡学会専門医/日本医師会認定産業医/経営学修士(MBA)

千里中央メディカルクリニック・大阪本町メディカルクリニックにて、消化器内科や睡眠医療を中心とした診療に従事。日本睡眠学会専門医として、睡眠の質向上に関する情報発信も行っている。

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