ドクターブロナー×パタゴニア トークセッション&新製品発表会レポート

2019年4月25日、日本初上陸となる『オーガニックシュガーソープ』の発売を記念したイベントを東京・渋谷にて開催。
ドクターブロナー社長 マイケル・ブロナーによるプレゼンテーションの他、ゲストにパタゴニア日本支社長 辻井隆行氏を迎えたトークセッションを実施しました。トークセッションでは、両社の掲げるビジョンや、新たなオーガニック認証「リジェネラティブ・オーガニック認証(RO認証)」への想いを語っていただきました。

1.より高い保湿力を誇る『オーガニックシュガーソープ』が新登場

2019年7月15日に、新製品『オーガニックシュガーソープ』が日本に初上陸します。1本で顔、ボディ、ハンドが洗える高保湿オーガニックソープです。

<オーガニックシュガーソープの特長>

オーガニックの砂糖(スクロース)配合で、古い角質をすっきりと落としながら肌にうるおいを与えます。さらに通常石けんで多く配合される水の代わりにホワイトグレープ果汁を使用することで、従来のマジックソープよりもリッチな保湿を実現しました。

ソープとは思えない砂糖の豊かなキャラメル色で、使った瞬間に甘い香りに包まれます。

石けんでありながら、全成分の95%以上が有機栽培原材料の製品に与えられるUSDA認証を取得しています。

2.植物、人、動物、そして地球を守る「RO認証」

ドクターブロナーは新たなオーガニック認証「リジェネラティブ・オーガニック認証(Regenerative Organic Certification)」(以下RO認証)を制定し、2020年の設立・取得を目指しています。
 
RO認証は総合的な認証で、工業型農業、気候変動、経済的不公平などの地球問題に対応する、エコロジカルで有効的な農業生産システムの見本となるべく作られました。
 
従来の「工業型農業」は人々を有害な化学薬品にさらし、動物たちにも悪い影響を与えます。そして現在では恐るべきスピードで地球の表土が劣化し、浸食されています。それに対して環境再生型オーガニック農業は、健康で豊かな土壌を作り、健康的な農作物を育て、生物多様性を守りながら、植物、人、動物を養い、気候変動を緩和することができる持続可能な農業です。

ドクターブロナーは同じ志を持つパタゴニア社とともに、RO認証設立に積極的に取り組んでいます。

<RO認証の3つの柱>

土壌の有機物を増やし、土壌に炭素を蓄積することで炭素の大気放出を防ぎます。

家畜が痛み、怪我、病気、精神的苦痛などから解放され、適切な環境で生活できることを目指します。

農家、酪農家、労働者に経済的な安定と公正を提供します。

ートークセッションレポートー

3.ミッションは、地球と人を救うためにビジネスをすること

辻井:それでは、当社がどのような理念でどのような取り組みをしているか、紹介をさせていただきます。

 
MC:はい、よろしくお願いします。

 
辻井:実は我々アパレル産業は、例えば、エネルギー産業に次いでCo2を排出している産業であり、非常に高い環境負荷をかけているといわれています。それを受けて当社では、主に二つのことに気を配ってきました。

 
一つ目は、環境負荷を最少に抑える取り組みです。例えば、衣料品の主要素材の一つであるコットン。コットンを育てる過程では、その耕地面積を考えると異常なほど多量の殺虫剤や農薬、さらには枯葉剤までもが使われており、毎年約3万人が命を落としているという統計もあります。そこで当社では1996年より、使用するコットンのすべてを有機栽培のものに変更しました。他の素材についても同じアプローチを取っています。
 
二つ目は、ドクターブロナーも推進している人権に関する取り組みです。今年の当社の秋冬製品の約70%は、フェアトレード認証を得た工場で生産されております。
 
そうした環境と人権に配慮しながらビジネスを行ってきた私たちが、本日皆さまにご紹介したい新商品は、「カーンザ」という根の長い麦を使ったビールです。なぜ、アウトドアアパレル企業がビール?と思われるかもしれません。答えはシンプルです。それは、私たちにとって何より大切であるミッション、「地球を救うためにビジネスを行う」ためには、気候変動問題について取り組まなければならず、そのためには食品について取り組む必要があると考えたからです。根が長いカーンザを育てることで、微生物がたくさん生息できるようになり、土が肥よくになり、より多くの炭素を土が固着することで気候変動の歯止めになるのです。

 
MC:両社のように、業種が異なる企業が同じ志を持つということは珍しいですよね。

 
マイク:我々は業種は違っても、非常に共通部分が多いと思います。ビジネスを一つの理由・足掛けとして、世の中を良くしていこうと考える独立したファミリーカンパニーであること。そして収益だけを追うのではなく、地球が良くなるための決断ができる企業であることも共通していますね。

4.企業活動を通じて、本当の意味での豊かさを求めていく

MC:両社は昨今の環境問題・社会問題に対して、どのような取り組みをしていますか。

 
マイク:私たちはチャリティと企業活動は別のものではなく、持続可能なものは全てつながっていると考えています。例えば我々が得た利益は慈善活動に投資していますし、フェアトレードで原料調達をすることで世界中の人に力を与えることができます。そしてもちろん企業は、従業員がいるからこそ会社が素晴らしくなります。弊社では一番高いサラリーは一番低い人のサラリーの5倍までというルールになっており、これは有意義な投資だと考えています。本当の意味で社会を豊かにするには、世界中すべての人が豊かになる必要があるのです。
 
辻井:ある環境活動家が「死んだ地球では利益は生まれない」と提言していましたが、私もその通りだと思います。有限な資源をとり続けるだけでは収支が合わないので、とった分は返す、という発想がなければいけませんよね。きれいごとではなく、正しい選択といのは、中長期的には理にかなっていると思います。地球環境に配慮した企業活動は、最終的に経済的にもリターンがあると感じています。
 

MC:近年はSDGsが日本でも注目されていますよね?

 
マイク:より多くの企業がこういった問題に関心を持つことは、非常に大切なことだと思います。ただしマーケディングのためにSDGsで掲げている目標にコミットするのではなく、企業としての大義が根本にあり、それが元になって世界をより良くしていかなければなりません。企業が正しい選択をしてお客さまが支持してくれるというマーケティング価値が生まれるのは、企業理念があってこそですよね。

 
辻井さん:そうですね、多くの人や企業がこの問題に注目するのはとても意義のあることだと思います。
 
ただしSDGsの設定する17項目の中で、自分たちにとって最も苦痛な項目を選択し、それに対して本質的な取り組みができているか否かが重要ですよね。例えば森林を持続不可能な形で伐採している一方で、小さな山を購入して植林活動を行い、森林回復に貢献していると訴える会社があるとします。しかし、その企業が最初にやるべきことは、コストと時間を要する上に周囲からは評価されにくいかもしれませんが、森林伐採のやり方そのものを持続可能な方法に変えることだと思うんです。

5.短期ではなく中長期的な利益をもたらす「RO認証」

MC:それでは、両社が設立に向けて取り組んでいる「RO認証」について聞かせてください。

 
マイク:農業を良い方向に使おうと思っています。人間は常に、石油、工場、車などによって温暖化ガスを排出しています。そして農業においても土を耕すことで空気中に二酸化炭素を撒き散らしていますが、本当は二酸化炭素を土に戻すという農業方式を採用する必要があるのです。それが持続可能な農業だと思っています。そして土地だけではなく、農家の人や動物たちのことを考えることも大切です。そのためにも、フェアトレードプロジェクトや動物福祉の向上に取り組むべきです。それらを統括するRO認証を成立させることによって、RO認証を獲得した製品は土壌の健康・動物福祉・社会的公正の全てを満たしているということを明確にできるのです。
 
最初はどうしても生産コストがアップするかもしれませんが、RO認証が認知・理解されてより多くの方に認証を取得した商品を購入していただければ、それによって生産コストをダウンさせることも可能でしょう。

 
辻井:私もその通りだと思います。例えば我々のビールの原材料である麦は、毎年刈り取った方が多くの実をつけるそうです。しかし多年草であるカーンザのように、根を長く伸ばす穀物を育てれば、そのぶん微生物が増えて土がふかふかになります。その結果、単年草と比べて、耕す手間や機械、農薬や肥料を削減することができるので、結果として利益は上がっていきます。つまり、短期的に見れば単年草の方が効率的に思えるかもしれませんが、中長期的には、多年草の方がより多くの利益をもたらしてくれるという研究成果も出ているそうです。そういう意味で、ものごとを短期的視点ではなく、より中長期的な視点で評価するというのが、RO認証の発想の一つだと私は考えています。
 
マイク:同感です。残念ながら多くの企業は1年や四半期など非常に短いスパンで経営方針を判断していますが、中長期的な観点というのは非常に大切なことだと思います。私の祖父も常に「今ではなく10年後を見ろ」と言っていました。

6.消費者の声が届けば、社会を変えることができる

MC:お二人の話を聞いていると、我々消費者にもできることがたくさんあると思いました。

 
マイク:消費者の皆さんは、消費活動によって意思を表明するということを意識していただきたいと思います。そして我々は今後もこの取り組みを続けて、本当の意味での変化を起こしたいと思っています。
 
辻井:本当に消費者の持つパワーは大きいですから、その権利を使わないのはもったいないですよね。とはいえ、消費者が物をたびに毎回その商品のバックグラウンドまで考察するのは負担になりますので、私はシステムづくりが重要だと思います。
 
例えば私が先日旅をしたアラスカ滞在中に行ったスーパーでは、販売されている製品の全てがオーガニック製品でした。つまりこのスーパーで何かを買えば、自動的に環境負荷を抑えることに加担できるわけです。こういったシステムを構築していくためにも、消費者は常に積極的に声を上げるべきだと思います。消費者の声が複数届けば、大きな企業をも十分に動かすことができるのではないでしょうか。
 
MC:まさに私たち消費者一人ひとりに、世界を変えて行くパワーがあるということを痛感しました。マイクさん、辻井さん、本日は本当にありがとうございました。

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