「リジェネラティブ・オーガニックとフェアトレード 世界不平等の解決へ向けて」
ドクターブロナーが目指す「オールワンビジョン」とその取り組み
〜フェアトレード編〜

 
去る4月22日は、地上にいる誰もが地球のことを思うアースデイでした。ドクターブロナーも今年は、アメリカ本国でスペシャルオペレーション ヴァイスプレジデントを務めるゲロ・レソン氏の来日に合わせイベントを開催。インフルエンサーの方々を招き、リジェネラティブ・オーガニックやフェアトレードに関するトークショーの中で、ドクターブロナーの歴史や取り組みをシェアました。後編となる今回は、ゲロ氏の話からフェアトレードについて学びながら、5月に発売される新商品もご紹介したいと思います。
 

 

ドクターブロナーがオーガニックから、
より公正で透明性の高いフェアトレードへと切り替えた理由

 
「オールワンビジョン」を企業理念に掲げ、現在40か国で販売されるドクターブロナーは、インターナショナルでされるナチュラルソープブランドとして常に責任ある行動を心がけています。そんな私たちがなぜ、原材料の供給源をフェアトレードとリジェネラティブ・オーガニックへと切り替えたのか。その経緯について、ゲロ氏はこう話します。
 
「私たちは1948年の創業以来、ソープにバーム類、歯みがき、クリーンスプレー、チョコレート(日本では未発売)などを作ってきました。そして遡ること20年前、現オーナーであり創業者の孫にあたるデイビッド・ブロナー氏とマイク・ブロナー氏は、“自分たちが作る製品の原材料は、人や地球にとって良いものなのだろうか?”という疑問を持ちます。そこですぐに原材料をオーガニックなものへと切り替えますが、仲介業者が入ることで原材料が果たして本当にオーガニックに作られているのかまでは確認できないうえ、生産業者の安全性や状況は不透明なまま。そんな状況を変えるため2005年、生産者とダイレクトに取引できるだけでなく、原材料の成長をきちんと見届けられ、さらに生産者とコミュニケーションをとりながら、彼らが属するコミュニティとその地域環境にもメリットをもたらすフェアトレードへと移行。複数の垂直統合型プロジェクトに投資もしながら、サプライチェーンそのものの構築と運用へと舵を切ったのです。」
 


 

ドクターブロナーのフェアトレードプロジェクトの5つのガイドラインと
私たちが注力する「公正な労働環境」、「環境の持続可能性」について

 


 
ここでドクターブロナーの「フェアトレードプロジェクト」について、ご紹介します。
ドクターブロナーのフェアトレードプロジェクトには、下記5つのガイドラインが決められています。

 

1.公正な価格
農家の収穫に対し公正で安定した価格を支払うこと
 
2.公正な労働環境
生産者に対し安全な職場環境・公正な報酬・昇進の機会を提供すること
 
3.トレーニング
農家に堆肥のつくり方を指導し、生産性向上のための技術を伝えること
 
4.環境の持続可能性
有機農業を実践し、健康的な土壌をつくること
 
5.フェアトレードファンド
農家の製品価格の10%を奨励金として地域開発に支払うこと
 

フェアトレードと聞くと思い浮かぶのは「公正な価格」。それは生産者の方々に対して十分な利益が出る金額で物の取引が保証されていることです。ドクターブロナーはそれだけではなく、オーガニック植物原材料という商品に対しての奨励金として「オーガニックプレミア」を商品価格の10%上乗せして支払っています。それに加え、商品価格の10%を積み立て用の基金「フェアトレードファンド」として支払っています。その基金はその地域の人々や生産者が必要としていることに対して使用できるのです。
第三者機関から評価としてフェアフォーライフ認証(FFL)を受けており、年次視察も慣行。
さらに、フェアトレードのガイドラインの中で「公正な労働環境」と「環境の持続可能性」も注視しています。
それについてもゲロ氏がお話ししてくれました。


 

 
「“公正な労働環境”とはまず、業務に従事する現場の方々へ適切な給料が支払われているだけでなく、生産に必要な経費を十分に上回っていること。また、労働環境が安全であり、公正な昇進機会があり、適切な待遇を受けていること。そして働く人々が自分の能力をさらに向上させるために教育の機会を得られることが、公正な労働環境であるとドクターブロナーは考えます加えて、性別や給与のレベルによって差別を受けないこと、また児童労働の禁止など、これらも全て“公正な労働環境”の基準に含まれています。またこの“公正な労働環境”の対象は、農業従事者の他、我々が関わるサプライチェーン全体をカバーします。
そして同時に重視しているのが、環境の持続性と動物福祉です。人々の労働環境を改善しながらも、森林を汚すゴミの廃棄などは決してしませんし、大気汚染、水質汚染などをしないように管理しています。畜産についても、飼育されている動物は放牧をベースとし、決して虐待などが起こらないようにする。このように生産者の方にとってプラスになることはもちろん、土壌や植物、動物へのケアもしながら、生産の向上などを考えた取り組みこそが、ドクターブロナーの考えているフェアトレードです。」

原材料の使用量は年間8000トン!
フェアトレードで供給される作物とその内訳について

 
さらにゲロ氏は続けます。
 
「現在、一番多く使われている原材料は、ソープの心地よい泡を生成するのに欠かせないココナッツオイルです。続いてバーソープを固めるために必須となるパーム油とパーム核油。その他、肌に良いオリーブオイルや、様々な製品の香り付けにペパーミントやラベンダーや、シトラス、ティーツリー、ユーカリなどです。
 


 
「フェアトレードへの移行当時は、ココナッツやアブラヤシ、オリーブのフェアトレードがなかったため、ドクターブロナーはそれらの植物に詳しく、必要な精油機器、搾油機に関するアドバイスや手助けしてくれる人々を雇用し、自社生産する垂直統合型のプロジェクトを開始しました。
垂直統合とは、主に現地で有機農業に携わる農家を確保し、我々の使う原材料のオイルを生成するための工場を建設、現地でプロジェクトを運営・管理する従業員を採用してフェアトレードシステムを構築していくことです。私たちはそれらを取り仕切り、そのプロジェクトに掛かる資金調達も支援。15年間で5つの工場を作りました。そのうち3つは私たちが所有し、また、他の2つも運営に携わりながら我々が最大の顧客として責任を持って取引し、生産者やコミュニティについての収益を保証しています。」

 


 
現在、全世界で展開するパートナーサプライヤーの分布図。2005年から今まで、世界各国で15のプロジェクトが立ち上がっており、そのうち5つはドクターブロナーが直接関わっている。そのほか10のプロジェクトはパートナープロジェクトとしている。

 
「パートナープロジェクトでは、生産計画を立てる際、ココナッツをどのくらい買うか需要予測を手助けしながら、機器設備の購入、設置、備え付けなどを監督。有機農法に関する教育やトレーニングの実施とコンサルティングの他、大小さまざまな相談事に対応したり、資金調達の支援も行っています。また農家や工場に対してドクターブロナーが最大の顧客となって原材料を購入しつつも、一企業にだけ依存したビジネス形態にならないよう、ドクターブロナー以外の顧客も探しながら取引してもらうビジネス面のサポートと新規顧客を探すマーケティング活動の支援を実施。このようにサプライチェーンの構築と実行をハンズオン形式で続けながら、フェアトレードプロジェクトを遂行しています」

 
ゲロ氏は実際、上記で説明された方法で成功を収めている具体的なプロジェクトをいくつか紹介してくれました。
 

プロジェクト例①:スリランカのセレンディポール

 
「まずリジェネラティブ・オーガニックのココナッツ作りで成功しているスリランカのセレンディポールでは、フェアトレードも好調です。ここは2005年からプロジェクトがスタートしたのですが、開始当時、老朽化した工場だったところを買い取り、改修。現在では300人のフルタイムワーカーが勤務し、1200の小規模農家からココナッツを購入しているのですが、フェアトレードファンドの一環で私たちは橋の建設と、従業員たちの自宅改修、改築のための費用を援助しています。」
 


 
(画像左)橋を1つかけるにあたり、およそ一万ドルが必要。(画像右)このご家族は家を建て増しして部屋を1つ作ったそう。

 
「スリランカにはたくさんの水路がありますが、橋が老朽化して落ちてしまっていることがあり住民の方々は大きく迂回して移動しなくてはなりませんでした。しかし我々が3つの橋を作ったことで、移動するときの時間の大幅に削減できるようになりました。
また従業員の方々の住宅改築に必要な資金の援助について。右の写真に3名の女性が写っていますが、両側の女性が生産工場でお仕事されている従業員の方になります。私たちは、ここで働く従業員全員にそれぞれに1,000ドルずつ、住居の補修、改善に使う金額を保証するプログラムを行いました。例えば屋根の吹き替え、建て替えやトイレの増設、建て増しなど、それに費やするお金を会社が保証しています。やり方としては、始めに500ドルをお渡しして着手してもらい、進み具合を見ながらこの計画的に進んでいれば、残りの500ドルをお渡しする。このように透明性を持って取り組んでいます。」

プロジェクト例②:ガーナのセレンディパーム

 
「ガーナのセレンディパームでのプロジェクトについて。ここでは2009年からプロジェクトが始動したのですが、現在350人の方が現地の働きながら、700もの小規模農家の方々に関わってもらっており、リジェネラティブ・オーガニックも採用しながら会社としても成長しています。ここでの業務の中に、手作業でアブラヤシを選定したり、実を洗浄する工程があるのですが、そこに地域の女性の方々を積極的に雇用しています。」


 
ピークシーズンに収穫をした生産物の選定をしている様子

 
「ドクターブロナーは、ここでもスキルや性別に関係なく適切な収入を得られることと同時に、労働環境としても公正かつ、安全な状況であること、また女性が出産、育児などにより長期休暇を取る場合にも、ちゃんと有給扱いで対応するモデルの確立を目指しています。手作業で実を洗うだけでなく、ピークシーズンには収穫した生産物の選定を行ってもらってもらいますが、私たちはさまざまな要因から就業先を見つけづらい方々を積極的に雇用を創出しました。」

プロジェクト例③:インドの農村部



 
右の画像に写っている白シャツの女性はゲロ氏のチームメイトのジュリアさん。このプロジェクトは彼女の考案という。


 
「その他にもインドの農村での、生理用品と衛生管理に関してのプロジェクトをご紹介します。そもそもインドの農村部に住む女性にとって、生理用品は高額なため購入するのが難しいものでした。しかし、私たちは洗って何度も再利用できる生理用ナプキン(1枚2ドル程度)を6000枚(およそ3年分)確保し、農村部の女性たちにそれを提供するプロジェクトを行いました。その際には、使用方法を説明しながら、生理に関する教育や必要であればトレーニングを受けてもらい、みんなが洗えるナプキンを問題なく使えるようになるまで見届けしました。
インドでは未だに女性の生理、月経自体がタブー視されている傾向がありますが、現地の言語が話せるスタッフがおり、少しでも予算があり、さらに良い製品があればこのようにシンプルな方法で社会問題にも切り込めるという良い事例となりました。」

ドクターブロナーのフェアトレードが 多くの人を、土地を、周辺環境までを豊かにしていく

 

フェアトレードの移行に舵を切ってから15年以上が経ちますが、今もゲロ氏はそれぞれの現場を定期的に訪問し、現地の人々とコミュニケーションを取り続けており、ゲロ氏は「行くたびに活発な質疑応答を交わされている」と言います。

 


 

 
2023年2月にゲロ氏がガーナを訪れたときの様子

 
「ここは10年以上プロジェクトが続いており、この写真(下)は現場マネージャーの方々とのミーティング風景になります。彼らのほとんどがもともとは都市部で暮らしていた人々でした。しかし、私たちのプロジェクトを機に農村部へ引越し、さまざまな教育を受けながら生活しています。都市部に比べたら映画館やレストランなど、商業施設などはありませんが、その中でも結婚して家庭を持ち、業務に従事している。その理由には、現地で仕事をするなかでさまざまな業務やコミュニティができ、意義ややりがいを見出していること。またそこで尊敬を集め、意思決定など自分たちに権能が与えられ、自由であることを感じていると考えられます。ドクターブロナーは、ここでさらに経験を積んでもらい経営をする能力を身につけ、独立も視野に入れてもらうことを目指しています。」

 


 
フェアトレードを通して生き生きと仕事しながら、リジェネラティブ・オーガニック農法も実施して環境を改善していく現地の人々

 
「紹介したプロジェクトは一部ですが、ドクターブロナーは目下、サプライチェーンで5万人相当の農業従事者の方々へ暮らしの影響を与えることができています。そうして人々がスキルアップしながら快適な生活を送る支援をしつつ、土壌の質の改善も広げていくこと。そしてこれらのプロジェクトが多くの人々をつなぎ、企業と企業をつなぎ、他の国とのつながりを構築することを目指しています。それによってドクターブロナーだけではできないリジェネラティブなネットワークも構築し、先進国と開発途上国、開発途上国の方々と労働者、また供給に関わる多くの方々が、その流れの中で単に搾取されるだけになることを防ぎます。
そしてこれからもフェアトレードとリジェネラティブ・オーガニックを通して、作物を買い付けるだけではなく、その他のメリットを供給できる取り組みについて評価してもらい、パタゴニアのように賛同してくれる企業のコミュニティも広げている最中です。そうしてインスピレーションを得て、これからもリジェネラティブなサプライチェーンが広がっていくことを心より願っています。」

インドからフェアトレードで調達したペパーミントを使用 2023年5月25日より、体感-4.2℃*のマジックソープ ペパーミントセットが限定発売!

 
フェアトレードに対しての理解が深まったところで、朗報です! これから暑くなる季節に先駆けて、限定品が発売されます。ドクターブロナーの看板商品であるマジックソープから、“お風呂上がりにエアコンいらずの爽快感”が得られるペパーミントSサイズにミニボトルが付いたセットが登場。ここで配合されているペパーミント油(香料)は、インドからフェアトレードで調達。原材料のミントは、機構危機改善のためリジェネラティブ・オーガニック農法で栽培されており、人にも地球にも優しく作られたオーガニックミントです。一度使えばやみつきになること間違いなし、夏に向けてプレゼントなどにもおすすめです。
 


 
リジェネラティブ・オーガニックとフェアトレードに関するトークショーとして開催された今回。
知っているようで知らなかったフェアトレードについて学びつつ、ドクターブロナーが徹底する人、環境、地球への支援とケアについて、ゲロ氏の話から改めて本気度と覚悟が伝わってきました。
それを受け私たちも引き続き、環境問題とエシカルな暮らし、消費についてさまざまなタイミングで立ち止まり、自問自答しながら、積極的に行動していきたいと思います。

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