ALL-ONE MAGAZINE #3
Homedoor
認定NPO法人
ホームレス状態を生み出さない社会を目指す
「Homedoor」の取り組みを知る

ドクターブロナーのカラフルな製品ラベルには、「オールワンビジョン」。すなわち、「争いや差別のない、1つの平和な世界」を願う、創業時からのフィロソフィーがしたためられている。
 
ここでは、そんなブランドの想いに共鳴し、平和や環境へやさしい眼差しを向けながら、小さな歩みを続ける人々にフォーカスを当てる。
 
2回目となる今回は、ホームレス状態にある人を支援する認定NPO法人「Homedoor(ホームドア)」の理事長を務める、川口加奈さんにスポットを当てる。

1.相談者がホッとひと息つける場所

人がホームレス状態に陥る理由は、実に多様で複雑だ。失業、病気、家庭環境、人間関係……。さまざまな理由で社会から打ちのめされ、心身ともに疲れ果てた人たちが、「ホッと安心できる居場所」であること。それこそがまず、「Homedoor」の目指すところだ。

入口を入ってすぐ、大きなダイニングテーブルが置かれた団らんスペースがある。開所中であれば自由に出入りすることが可能で、新旧の相談者やホームレス状態の人々らが、リラックスしながら過ごせる場になっている。

奥には職員たちが働く事務所スペースがあり、その手前には、食料や日用品、衣類などが所狭しと並べられていた。これは帳簿に記入さえすれば自由に持ち出すことができる。

こうした活動は、その多くが企業や個人からの寄付によって支えられているのが実情。ドクターブロナーも「Homedoor」を支援する企業のひとつだ。
 
取材当日は、某家具量販店から寄付された棚を、利用者たちが協力しあって組み立てる姿があった。事務所の備品として利用するためである。

川口さん曰く、「相談者を必要以上に“お客様扱い”しないようにはしています。日々の業務の中で手伝ってほしいことがあれば、変な遠慮はせずにお願いするようにしています」とのこと。

皆さん「こき使われているだけや」と笑うが、これが意外と良い気分転換になっているのかもしれない。

2.シェルターで心身を整える

上階には、相談者のための宿泊施設「アンドセンター」が併設されている。ベッドやユニットバス、エアコンなどが完備された個室が計18部屋。共有でキッチンや洗濯スペースも用意されており、最大で2週間程度、ゆっくりと心身を休められるようになっている。

利用期間などは相談者に対して十分なカウンセリングを行った上で決めるのが基本。特別な事情がある場合は、行政と連携して対応することもあるという。

一方でこの5月から、新たな宿泊施設「アンドベース」も稼働。既存の物件を活用したのもので、住所は完全非公開。

そのぶんセキュリティも高く、居場所を特定されたくない事情を抱えた人たちなどが、優先的に利用できるようになる予定だ。

3.働く意志に応えるビジネスモデル「HUBchari」

「Homedoor」は単に、生活困窮者のための“駆け込み寺”としてあるだけはない。新しい生活に向けた、継続的な就労支援も大きな役割だ。

その一例が、大阪府下に300以上もの拠点を持つシェアサイクルサービス「HUBchari(ハブチャリ)」の運営だ。

利用される電動自転車のバッテリー交換やメンテナンスなどを仕事として委託し、相談者は現金で報酬が支払われる。その一部を少しずつ貯金しながら、新たな生活への準備に充てていくという仕組みだ。

4.癒しのカフェスペース「おかえりキッチン」

最後に紹介したいのが、2021年6月、事務所のすぐ隣にオープンしたばかりのカフェ「おかえりキッチン」だ。

アンドセンターの宿泊者に、 月間200食の“まかない”を無料提供しているのが大きな特徴だが、一般の人にも多く利用されている。

寄付された食材を上手に活かしながら、栄養バランスのとれたボリューム満点のメニューを提供。「しんどい時こそ、最高のおもてなし」というアンドセンターのスローガンを体現したかのような、癒しの空間だ。

コロナをきっかけに、貧困の裾野はさらに広がったという。その一方で「Homedoor」の活動もまた、広がりを見せており、より多くの人に寄り添うべく、川口さんたちは日々、奮闘している。決して他人事ではない。まずは知ることが、社会を変える一歩だ。

認定NPO法人Homedoor
大阪市北区本庄東1-9-14
06-6147-7018
info@homedoor.org
https://www.homedoor.org

【INFORMATION】
インクルーシブシェルター「アンドベース」、サポーター募集中!
家族、健康、雇用など、いくつもの要素が絡まりあって起こるホームレス問題。
さまざまな背景を抱える方々のサポートを強化すべく、「Homedoor」では新たに、長期滞在型のシェルター「アンドベース」の展開をスタートしました。
そこで現在、このプロジェクトを応援してくださる3000人のサポーターを募集しています。
行政からの補助が受けられないこともあり、施設の運営には多くの方からのご寄付が不可欠なのが実情です。
以前から「Homedoor」を応援してくださっている方はもちろん、この記事をとおして初めて「Homedoor」やホームレス問題について知ってくださった方も、ぜひこちらの特設ページを御一読ください。
一人でも多くの方に、ご賛同・ご支援いただけると嬉しいです。

PHOTO:Akane Watanabe
EDIT&TEXT:Soichi Toyama

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