私たち人間を含む動物も植物も地球という名の家に住む1つの家族です。
今、危機的な状況にある地球環境を守るため、ドクターブロナーは様々な取り組みをしています。
その1つにリジェネラティブ・オーガニック、という農業手法への転換があります。“リジェネラティブ”とは、再生を意味します。ドクターブロナーの企業理念の1つに「Treat The Earth Like Home(地球を自分の家のように大切にしよう)」という考えがあります。
ドクターブロナーは、リジェネラティブ・オーガニックによって気候危機から地球を再生させることを目指しています。
CONTENTS
1―リジェネラティブ・オーガニックとは
2―リジェネラティブ・オーガニック認証
3―ドクターブロナーの取り組み
4―リジェネラティブ・オーガニックによる原材料生産
リジェネラティブ・オーガニックは、既存のオーガニック農業(有機農業)をさらに進化させ、「土壌の健康」、「動物福祉」、「社会的公正」を3 つの柱とした新しい農業システムです。生態系の健全性を守り、気候危機への解決策になると考えられています。
現在行われている工業型農業は、農薬や化学肥料によって土壌の肥沃さを奪ったり生物多様性を損なうだけでなく、土壌内の炭素を大量に放出することで、気候危機を促進しています。しかし、ロデール研究所によると、世界中のすべての農用地がリジェネラティブ・オーガニック農法に移行すれば、世界中の毎年の二酸化炭素排出量よりも多い量の炭素を土壌中に隔離できると試算されています。土壌に大量の炭素が蓄えられると、気候変動の改善だけでなく、土壌の生態系が豊かになり、肥沃な土壌へと再生されるのです。
リジェネラティブ・オーガニックは、リジェネラティブ・オーガニック認証(RO認証)に基づいています。
RO認証は2020年に設立された新しい認証制度です。既存の認証マークがそれぞれに認定していた「土壌の健康」、「動物福祉」、「社会的公正」の3 つのカテゴリーを総合して認定することを目的とし、それぞれが最高レベルの基準を定める総合的な認証です。
ドクターブロナーは、ロデール研究所や、同じ志を持つ企業や活動家などとともに、RO認証の設立を牽引しました。
リジェネラティブ・オーガニック認証によって、気候危機に立ち向かいながら、動物福祉を向上し、農家・酪農家・労働者に経済的な安定と公正を提供し、持続可能な地位生態系とコミュニティを作ることを目指しています。
2005 年以降、ドクターブロナーは主要原材料であるココナッツ、パーム、オリーブ、ミントの大半をオーガニックやフェアトレードの原材料に移行しています。2018 年に原材料であるペパーミントの栽培をリジェネラティブ・オーガニックに切り替え、現在は世界7 か国の原材料生産地でリジェネラティブ・オーガニックを推進しています。2020 年に食用ココナッツオイルとして販売しているリジェネラティブ・オーガニック(RO) バージンココナッツオイルがRO 認証を取得しました。
堆肥、バイオマス、被覆植物によって土壌が炭素(腐葉土)を蓄積して培養し、有益なバクテリアや菌の生息地を作り出し、食物が成長するために必要な栄養を提供します。
耕作は土壌を柔らかくし、植付けや雑草防除に役立ちます。しかし、一般的な深耕や頻繁な耕作は土壌を破壊し、炭素の排出と侵食を助長します。土壌に負担の少ない耕作方法を採用することによって、土壌微生物への妨害を最小限に抑え、土壌に炭素を蓄積させます。
被覆植物の栽培は土壌の栄養素を豊かにし雑草や侵食を防ぎます。ヤシの木の根元でマメ科植物を栽培することで土壌が窒素を吸収します。
牧草のみで育てられた動物たちが、農地を廻ることで、栄養豊富な肥料を表土に戻し、土壌炭素の蓄積を増やします。
ココナッツオイル(ヤシ油)は、マジックソープやマジックソープバーの主要原材料であり、保湿力と豊かな泡立ちを生み出します。また、リジェネラティブ・オーガニック(RO) バージンココナッツオイルの原材料でもあります。
ドクターブロナーのココナッツ栽培は、2004 年のスマトラ島沖地震で壊滅的な被害を受けたスリランカの産業の再建支援をする中で、オーガニック・フェアトレード・ココナッツオイルプロジェクトを通じて姉妹会社セレンディポールを設立したことに始まります。2018 年にはセレンディポールは約8090 ヘクタールを栽培する1,200 以上の農家と協力し、250 人の従業員と専門スタッフを雇い、年間3,000 万個のココナッツを加工しています。セレンディポールのココナッツオイル工場からは、一般的な包装廃棄物を除けば、一切の廃棄物が出ません。ココナッツの外皮はロープやドアマット・砂防の繊維として加工され、殻は火力発電のための原料になったり、木炭や活性炭製造のために販売されます。種子は動物用飼料や食品加工のために販売され、ココナッツウォーターの一部は地元の輸出業者に売られます。残りの部分はバイオ処理され、会社の庭を潤す水として利用されます。
セレンディポールは設立当初から、オーガニック農業は単に「農薬を使わない」だけではないという考えを示し、農家はリジェネラティブ・オーガニック農法にも取り組みました。そして2020 年のRO 認証設立と同年に、リジェネラティブ・オーガニック(RO) バージンココナッツオイルは、RO 認証を取得しました。
ドクターブロナー製品の中で最初に誕生したマジックソープ。11 種類あるフレグランスの中でもペパーミントがオリジナルです。クールな清涼感が人気で、世界中で最も親しまれている香りでもあります。
マジックソープをはじめとする、様々なドクターブロナー製品に使われるミントは主に、2004 年からインドの首都デリーから約400km東のウッタル・プラデーシュ州で、合計1200名以上の小規模農家によって栽培されています。元々この土地では、何十年にもわたり化学肥料の使用や頻繁な耕作が続けられ、土壌は枯渇し、有機物がほとんど含まれていない農地になってしまっていました。ドクターブロナーは、彼らの農場を有機農法に転換し、 2017 年には包括的な土壌再生プロジェクトを開始しました。ドイツの援助機関GIZの資金援助を受けて、コンポストターナー(堆肥攪拌機)を購入し、さまざまな農業廃棄物から最終的に約10,000トンの堆肥を生産する予定です。堆肥は、炭素クレジットの販売による補助金で農家に販売されます。また、保全耕作への移行、被覆植物やEU で販売される豆やレンズ豆などの窒素固定に役立つマメ科の輪作作物の植え付けなど、トレーニングやハードウェア、種子の供給を通じて農家をサポートしています。 また、果樹や日陰樹(作物を直射日光から守る役割の木)、天然の殺虫剤の原材料となるニームなどの栽培の助けとなる樹木の大規模な植林プログラムも進行しています。インドで生産しているミント油は、RO認証を取得しています。
マジックソープやマジックソープバーなどの主要原材料であるパーム油は、保湿力や高い洗浄力をもたらしたり、マジックソープバーの硬さを保ちながら、ココナッツオイルが作る豊かな泡立ちをバランス良く保ちます。
パーム油は、世界で最も使われている植物油で、食品、化粧品、医療品、洗剤など、多く使われています。しかし、原料となるアブラヤシの栽培には大きな問題があり、東南アジアでアブラヤシのプランテーションが急速に拡大し、大規模な環境破壊や社会的困窮を引き起こしています。ドクターブロナーは、森林を破壊せず、重要な生態系を危険にさらさず、コミュニティの困窮を引き起こさないパーム油の供給源が必要でした。パーム油の使用をボイコットするだけでは、問題は解決しないからです。
2008年に小規模農家からパーム油を購入・調達するため、ガーナにセレンディパーム社を設立しました。セレンディパームが取引する農家では、農地を確保するために新たな原生林や老齢林の伐採は行わず、既存の農地を再利用して新しいアブラヤシを栽培します。使う場所は何十年にもわたり農業とアグレフォレストリーに使われていた土地なため、周囲に大型の動物はおらず、鳥類や小型哺乳類、昆虫やヘビなど、固有生物の生態系を脅かすことのないアグロフォレストリーとリジェネラティブ・オーガニックで農業を行っています。セレンディパームで生産するパーム油は、RO認証を取得しています。
RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)は持続可能なパーム油の生産において、最低限の生産基準を設定しようとする業界イニシアチブです。この認証は正しい第一歩ではありますが、オーガニック認証とフェアトレード認証と比較すると、基準が低く設定されており、監視体制も強くはありません。ドクターブロナーのパーム油で採用しているオーガニック認証とフェアトレード認証の組み合わせは、RSPOをはるかに上回る認定要件となり、それらを採用することによって、パーム油を始めとした全てのオーガニック原材料の持続可能で社会的に有益な生産を保証することができると考えています。